サイモン・シン著、「フェルマーの最終定理」読了。
・フェルマーの最終定理とは
フェルマーの最終定理とは、3 以上の自然数n について、xn+ yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しない、という定理。完全証明は、数学界最大の超難問とされ、350年に渡り数学者を苦しめてきました。
「私はこの命題の驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」というフェルマーの言葉、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
本著は、天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦悩を描いた、数学ノンフィクションとなっています。
たとえ数学が全くの初心者でも、数学者自身の物語、そしてフェルマーの最終定理に対する彼らの情熱に心揺さぶられること、必至です。
・サイモン・シンの魅力
サイモン・シンの作品の魅力は、未知の世界を、分かりやすく、感動的に伝えてくれるところ。
彼の作品には、テーマに関する徹底した取材、たくさんの素材を全体の中に見通しよく配置するゆるぎない構成力、人間への暖かいまなざしが共通している。それに加えて、科学の最良の部分を、文化史・社会史的な背景の厚みの中で、しかも感動的に、描き出して見せるところに大きな特質がある。(訳者青木薫あとがきより)
・数学界における意味
個人的に印象に残ったのは、フェルマーの最終定理の証明が、数学界に大きな意味を持っていたということ。
・数学とは、無知の海に浮かぶ知識の島々
数学とは、無知に浮かぶ知識の島々の世界と比喩されている。
すなわち、独自の発展により、各々が独立体系をもっているということである。
形について研究する幾何学者たちの島もあれば、数学者たちがリスクや偶然を論じ合う確率の島もある。
何十もの島のそれぞれが独自の用語体系を持っているため、島が違えば住民の話していることもさっぱりわからなくなる。
・数学の大統一
ワイルズの完全証明の特徴として、20世紀の数論におけるほとんど全ての進歩を寄せ集め、1つの証明に組み込んだこと。
すなわち、数学における橋を架けたのである。
このことは、ある領域で解決出来ない問題を、他の領域の対応する問題に置き換え、その新しい領域のテクニックを使って解決できるかもしれないという可能性が生まれるということを示唆しており、
フェルマーの最終定理の完全証明が、数学界で大きな意味を持つことを表しています。
美しくも恐ろしい数学の世界、垣間見てはいかがでしょうか。
・未知の分野を学ぶこと
イノベーションの原則は、異なる者同士の組み合わせ。
良い取組を続けていくためにも、進んで未知の分野を勉強していきたいです。
そういう姿勢が次につながっていくような気がします。