薩摩の國から

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20%ルールの秘密 ~「未来に先回りする思考法」 佐藤航洋~

 

未来に先回りする思考法

未来に先回りする思考法」読了。

いくらでも記事に書けそうな、示唆に富んだ素晴らしい本でした。

今回は、印象に残った20%ルールについてまとめます。

 20%ルールとは

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20%ルールとは、「就業時間の20%は、会社から指示された業務以外の自分の好きなプロジェクトなりアイデアに時間を費やしてよい」というGoogleの有名なルール。

 

一見、Googleが創造性に溢れた社員を引き付けるための戦略として、社員に与えた太っ腹な福利厚生のようにも思えますが、本来の意図は異なります。

 

どのような意図が隠されているのでしょうか。

 

・パーソナライズの誤謬

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今後、テクノロジーが発達し、莫大な過去の行動データ学習によって合理化・最適化が行われ、ユーザー1人1人の特徴に合わせた(パーソナライズ)サービスが提供されることになります。

 

ただ、パーソナライズは利便性をもたらす一方、過剰に合理化や最適化を進めてしまうと、本来ならあったはずの偶然の出会い」や「思ってもみなかった発見」が排除され、選択肢を狭めてしまうというがあるのです。

 

具体的事案を見てみましょう。

スマートフォン広告の実験

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著者が、かつてスマートフォンの広告効果を最大化するために行った実験に関するエピソード。

 

・ネット広告の性質

 ネット広告においては、クリック率や成約率を検証しつつ最も良い配信先を選定すること、つまり適正なパーソナライズが非常に重要。興味のありそうなユーザーにだけ広告配信し、無駄打ちは極力避けなければなりません。

 

・実験

 私は、機械と人間どちらがそのパーソナライズ能力が優れているのか、試してみることにしました。片方は、マーケティング担当者が手動で広告の配信先を選定。もう一方は、人間を一切介さず完全にシステムに配信先を選定させます。

 

・最初の数週間、そして2か月後

 マーケティング担当者の武器は、経験。どんなターゲットに広告を見せればよいか、今までの経験からおおまかに予測が出来ます。一方でシステムはそういった知見を持っていないので、初期は様々なターゲットにランダムに広告を配信し、その結果の成否を学習し、徐々に効果の良い配信先を見つけていきます。

 

 最初の数週間、高い効果を上げたのは、経験が武器のマーケティング担当者。しかし、2か月以上経つと、システムが自動配信した方が圧倒的に費用対効果が高くなってしまいました。

 

・まとめ

 システムは、初期こそ知見もない中で不適切なユーザーに広告をどんどん配信していたものの、何百万人とトライ&エラーを繰り返して、ゼロからパターンを学習し、ついには人間より圧倒的に高いパフォーマンスを挙げるようになりました。

 

 配信される規模が大きくなるほど精度が下がる人間に比べ、システムは、扱うデータが膨大であればあるほどパーソナライズの精度が上がっていきます。私達には因果関係が分からないようなパターンさえ認識する場合もあります。

 

・後日談

 圧倒的に見えたシステムの優位も、結局長くは続きませんでした。

 

システムは学習行動により、合理化・最適化を進めていくと、配信するターゲットの数はどんどん減ってしまいます。

 

 システムは行動の結果分析は得意でも、行動には表れない潜在的な顧客層の需要を喚起したりすることは苦手。あえて確率の低そうな顧客にも広告を見せてみるということはできません。

 

 しかし、一見効果がなさそうなターゲットでも、配信してみれば成約につながるかもしれませんし、そういった試みこそが新規顧客獲得につながります。

 

 システムはそのような不確実性を極力排除し、短期的な合理化や最適化を進めてしまい、長期の機会損失を引き起こしてしまうのです。

 

20%ルールの意図

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Googleを率いるような優れた経営者も、常に正しい決断をし続けられるとは限りません。ネットの市場は速度が速いので、トップが意思決定を一つでも間違えば、途端に時代に乗り遅れるリスクがあります。

 

そこで、Googleは、数万人いる社員の業務時間の20%をそのリスクヘッジに充てているのです。もし仮に経営者の意思決定が間違っていても、数万人の社員の20%の時間を費やしたプロジェクトの中に正しい選択があれば、企業は存続できます。

 

企業の80%のリソースを経営陣の意思決定通りの仕事に費やし、残りの20%のリソースを社員の意思決定に任せる。このことにより、企業全体がおかしい方向にならないようにバランスを取っているのです。

 

・今後どうあるべきか

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どれだけ多くの経験を積んでも、不確実性から逃れることはできません。

 

だとするならば、最もリスクのある選択は、意見すると合理的に思える選択肢にすべてを委ね、一切のリスクと不確実性を排除しようとすること。

 

将来的にはこういった不確実性までもがアルゴリズムに組み込まれたパーソナライズが誕生し、この問題は解消されるかもしれません。

 

しかし、現時点において私たちが成すべきことは、自分が完全に合理的な選択が出来るという考えを諦め、不確実性を受け入れつつ、意思決定を行なうことなのではないでしょうか。