薩摩の國から

地域づくりを中心に様々なテーマについてまとめていきます。

オリンピック開催にあたり、考えるべきこと ~本当のお客様

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いよいよ、2016年リオ五輪の開催が近づいてきましたね。

そして、2020年東京五輪も開催まであと4年となりました。

 

今回は、先日も紹介した「山奥の小さなタクシー会社が届ける幸せのサービス」という書籍に、オリンピック開催にあたり、考えるべきことが示唆されていたので、ご紹介しようと思います。

長野オリンピックにおけるオリンピック特需

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長野オリンピックは、長野市のタクシー業界に大変な特需をもたらしました。

世界中から選手、競技団体の役員、メディア、見学者が訪れます。

とりわけメディアは、長野市に慣れず、土地勘がないにもかかわらず、タイトなスケジュールで移動する必要があるため、オリンピックの開催中ずっとタクシー借り上げます

当時、中央タクシーの乗務員は、18時間稼働して平均5万円の売り上げでした。

メディアの借り上げは、9時から夕方5時までで7万円です。

半分の時間倍以上稼げます。

仕事はそれで終わりになりません。オリンピックの開催中、長野市は駅前から繁華街まで人手溢れかえり、まるで新宿や渋谷のような不夜城になるため、夜も仕事が途切れません。

夕方5時からまたひと稼ぎできるのです。

・本当のお客様とは誰か

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確かに、オリンピック特需による利益は凄まじいです。

 他のタクシー会社はバンバン稼ぎます。普段あまり売り上げていなかったタクシー会社はいつもの3倍稼ぎました。その期間、私達(中央タクシー)の売上は長野市のタクシー会社で最下位に甘んじます。トップから急落です。

しかし、中央タクシーの方たちは、「お客様が先、利益は後」という理念を守り、地元のいつものお客様優先したのです。

 私もこれから特需で稼げると思うと嬉しくて、気持ちもほくほくとしていました。「もうすぐオリンピックだね。特需来ていいよね。」

「でも社長、車がなくなっちゃいますね。」

「ああ、おかげさまで完売だ。」

 乗務員さんも喜んでいるだろうと思っていました。ところがです。

「それはいいんですけど、毎日病院に通っているおばあちゃんはどうなるんですかね。タクシーがなくなっちゃうから、どうなるんですかね。

 

 ハッとしました。この一言で目が覚めました。

 しまった。いつもタクシーに乗って下さるお客様を忘れていた。自分がお客様主義と言っておきながらまるで分かっていなかった。そのことを乗務員さんから教えられました。

 早速、乗務員さんたちを集めて「地元のいつものお客様を優先するか、特需でいくかどうしようか。」と聞いてみました。

いつものおばあちゃん、おじいちゃんのところへ行きましょう。

 乗務員さんたちは、いつも率先して「お客様が先、利益は後」と口にしている私が驚くほどきっぱり言います。

中央タクシーは、メディアに断りを入れ、どうしても断りきれなかったメディアのみ引き受けました。保有台数3分の1を借り上げました。

 ・オリンピック後

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オリンピックが終われば、メディアは一斉帰ります。それこそ潮が引くようにサーッと帰っていきます。

 

誰が残るでしょうか?

長野市の人たちです。オリンピックが終わってもタクシーに乗ってくれるのは長野市民です。

ところがオリンピックが終わると、他のタクシー会社の売り上げが落ち始めます。気がつけば中央タクシーは、長野市のタクシー1台あたりの予約回数の180%を売り上げるようになっていました。

 オリンピック期間中に、中央タクシーのファン獲得したのです。

 長野市民の中には一度も中央タクシーに乗ったことのないお客様が山ほどいます。別に中央タクシーが嫌いなわけではありません。ふだんは自宅から近い所にあるタクシー会社を利用しているのです。残念ながら中央タクシーはその方たちと今までご縁がなかったのです。

 これは絶好の機会です。

 オリンピック開催中は、いつも〇〇タクシーを使っていたおばあちゃんが、そこへ電話したら断られるケースが増えるでしょう。なにしろメディアに借り上げられてしまってタクシーがないのですから。おばあちゃんに断られても、病院には行かねばなりません。次に違うタクシー会社に電話するでしょう。どのタイミングかは分かりませんが、最終的には中央タクシーに電話がかかってきます。どのタクシー会社も車がないのですから。そのおばあちゃんに中央タクシーに乗っていただければファンになって、オリンピック後も乗ってもらえると思いました。 

 オリンピックという世界的な大イベントの熱狂の中でも、「お客様が先、利益は後」という理念がきちんと実行されたのです。

・このエピソードから学ぶべきこと

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このエピソードから私たちが学ぶべきことはなんでしょうか。

 

それは、目先の利益にとらわれ、地域の人たちの生活をないがしろにしてはいけないということです。

 

最近、観光地方創生というものが注目を浴びていますが、その地域に住む人々のことを考えていない策が打ち出されてしまっている所もあるというのは事実です。

 

全く攻めないというのも、それはそれで良くないと思うので、地域住民の方々と話し合いながら、地域住民の生活の質利益獲得バランスをどのようにとっていくのかを決定することが重要だと思います。